Introduction
Macintoshとの出会い
まことに古い話で恐縮だが、Apple社の初代Macintoshが出た時、こいつはすげーなと思った。
まさにパソコンの未来形という感じがした。
当時のパソコンといえば(マイコンという呼び方が正しい?)日本ではNECのPC98シリーズが全盛で、プログラミング言語といえばBASICが主流(調べてみると、1984年、ちょうどこの時 PC9801E/F/MにMS-DOSが載ったようだ)。
みんなが呪文のようなコマンドをたたいてパソコンを動かしていた頃、Macintoshでは、現在のGUI(Graphical User Interface)の基礎ともいえるアイコンの導入やプルダウンメニュー、マウスによる操作を実現していたのだ(正確にはMacintoshの前身Lisaが初)しかも128Kbという小さなメモリー空間で行っていたというのは、まさに、なんじゃこりゃ〜という驚きだった。
Motorola 68000
MacintoshのGUIが実現できたのは、Motorolaの68000という16ビットCPUを採用したおかげだと思っている。
当時パソコンの16ビットCPUといえば IBM PCやPC98シリーズが採用したことで、Intelの8086が圧倒的なシェアを持っていた。しかしながら、性能は68000の方が上だったように思う。
その理由のひとつは、8086が8ビットCPUとの互換性を重視して設計されていたのに対し、68000では、パソコン用のCPUとしてではなくミニコン用を意識して開発されたということが挙げられる。そのため、16ビットのCPUでありながら、32ビットCPUの技術が盛りこまれているとされ、実際、速かった。
Motorola 6809
これは余談になるが、その頃、自分が最初に買ったパソコンは富士通のFM11という機種で、当時としてはめずらしくシステムはROM起動ではなく、フロッピー起動という画期的なものだった。すなわち、挿入するフロッピーを換えることでまるで違うシステムになるのだ(しかもCPUも増設できた)。こいつには68000の前身である6809というMotorolaのCPUが2基載っていた。これもまた、8ビットでありながら中身は16ビットというすぐれたもので、シェアはIntel8080やその互換であるZ80に負けていたものの、処理能力は高く、8ビットCPUでは初めて『マルチタスク』を実現したOS-9を生むことになった。これは、UNIXクローンの傑作と言われ非常に高く評価された。実際に使っていたがよく出来ていて非常に勉強になったし、この上で走った構造化言語Basic09はとても速かった。今から考えれば、OSとしてはGUIを除けば当時のMacintoshよりすぐれていたかもしれない。その後、MacOS9が登場することになるが、このすばらしいOSのことを連想した人は少なくないと思う。
パソコンのCPUの世界では、Intelが主流だったが、Motorolaのほうがいいものを作っていたと断言できる。しかしながら、本当にいいものが流行するとは限らないところが、世の中の不条理なところだ(汗)
8086 VS 68000
68000の話に戻るが、細かい話をすれば、8086ではセグメントレジスタなる特殊なものを使って1Mバイトのメモリをやっと操作していたのに対し、68000では16Mのメモリ空間をダイレクトに扱えた(命令とデータで分ければ32MB使えた)。ちなみに68000は内部では32ビットでデータ処理をしていたため、32ビット版である 68020,68030,68040 になっても68000のプログラムがそのまま走るという互換性も持っていた。
8086はプログラムの内容とは別にセグメントのことを常に意識しなければならず、規模が大きくなればなるほどオーバヘッドが大きくなり処理も遅くなる傾向にあったように思う。自分も含め、両方でブログラミング経験のある人は、68000のほうが自由に書けると思ったはずだ。
UNIXマシン
で、話は戻るが、学生時代、友人の研究室に最新鋭のSUNのUNIXマシンが導入された。けっこう大げさなマシンで高い処理能力を誇っていたが、そいつにも68000が搭載されていた。小さなMacintoshがそいつと同じCPUであることを知り仲間ウチで大騒ぎになった。ちなみにUNIXマシンの値段は確か300万円くらい。しかしながら、Macintoshの値段も高く、60万円近くしていたという記憶(汗)その後、Macintoshに対する高級なイメージが続くことになる。
その後の68000
ちなみに68000は、その後日本でも徐々に評価が高くなり、名機として名高いシャープのパソコン『X68000』や高い画像処理能力が要求されるアーケードゲームにも搭載された。ちなみにセガのバイクゲーム『ハングオン』には68000が2基搭載されていた事は有名(?)。
Macintoshのクローン?
その後、なりゆきでコンピュータ関係に就職したため、不本意ながら 8086 や MS-DOS とのおつきあいがはじまる。これが今につながる IntelやMicrosoftが嫌いになるきっかけでもあった(謎)
その頃、Windows3.1やOS/2が出始め、その関連のソフトウエア開発も行っていたが、今から考えれば、いずれも MS-DOS上に載ったMacintoshの不完全なクローンで、動作も重く、社内での評価も悪かった。しかし、次世代OSは、Macintoshのようなものをめざしているということは理解できた。まあ、DOSのコマンドを覚えないと動かないようなものと、マウス操作である程度のことができるものと、どっちが便利かを考えれば当然といえば当然だが。しかしながら、より出来が悪かったWindowsほうが残ることになったのは、当時全く想像できなかった(汗)


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